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名古屋地方裁判所 昭和41年(行ウ)67号 判決 1967年9月26日

名古屋市東区鍋屋町三丁目五一番地

原告

林昇

右訴訟代理人弁護士

尾関闘士雄

名古屋市東区主税町三丁目一番地

被告

名古屋東税務署長

志津一郎

右指定代理人

松沢智

右同

新保喜久

右同

沢村龍司

右同

松井清

右同

柴田富夫

右当事者間の課税処分取消請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告が原告の昭和三九年分所得税についてなした更正のうち所得税額二、一六〇円を超える部分および過少申告加算税の賦課決定を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として次のとおり述べた。

一、原告は、被告に対し、昭和三九年分の所得税につき、総所得金額を三〇〇、〇〇〇円として確定申告をなし、その税額二、一六〇円を納付したところ、これに対し、被告は総所得金額を八四三、一一五円、所得税額を七七、〇〇〇円と更正し、かつ、過少申告加算税三、七〇〇円の賦課決定をなし、その旨原告に通知した。

二、原告は前項の更正および賦課決定について、被告に対し異議申立をなし、次いで名古屋国税局長に対し審査請求をなしたが右審査請求は昭和四一年八月二三日付で棄却され、その裁決書謄本を原告は同月二五日受領した。

三、しかし右更正のうち所得税額二、一六〇円を超える部分および過少申告加算税賦課決定はいずれも違法であるから、これらの取消しを求める。

被告指定代理人は主文と同旨の判決を求め、本案前の抗弁として次のとおり述べた。

行政庁の処分の取消を求める訴は、行政事件訴訟法第一四条により処分または裁決のあつたことを知つた日から三ケ月以内に提起しなければならないところ、本訴は原告が名古屋国税局長の本件課税処分に係る審査請求の裁決書を受領した日である昭和四一年八月二四日から、三ケ月を経過した後に提起されたものであるから、不適法な訴である。

証拠として被告指定代理人は乙第一ないし第四号証を提出した。

理由

原告がその昭和三九年分所得税につき被告に対し原告主張のとおり確定申告をなし所得税を納付したところ、これに対し被告において原告主張のとおり更正および過少申告加算税賦課決定をなし、その旨原告に通知したこと、次いで原告において右更正および賦課決定につき被告に対し異議申立をなし、さらにその決定に対し名古屋国税局長に対し審査請求をなしたが、右審査請求は昭和四一年八月二三日附で棄却されたこと、以上の事実は被告において明らかに争わないからこれを自白したものとみなされる。

原告の本訴請求は、被告の右更正および賦課決定を違法としてその取消しを求めるものであるから、原告において右審査請求に対する裁決のあつたことを知つた日から三ケ月以内に提起されなければならないことは行政事件訴訟法第一四条により明らかである。そして、本件訴訟が昭和四一年一一月二五日提起されたことは本件記録上明白であるところ、原告は同年八月二五日右審査請求の棄却の裁決書謄本を受領して同裁決のあつたことを知つたものであるから、本件訴訟は三ケ月の法定期間内に提起されたものである旨主張する。しかしながら、原告がその主張の日にはじめて右裁決書を受領したことを認めるに足る証拠は存しない。かえつて、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一ないし第四号証によれば、右裁決書は昭和四一年八月二三日名古屋国税局係員の手により書留郵便として発送せられ翌二四日原告方に配達された事実を認めるに充分である。してみると、本訴の出訴期間は、前記裁決書謄本が原告に送達された日である同年八月二四日から三ケ月以内である同年一一月二四日までであること暦数上明白であるところ、本訴が右期間後である同月二五日に当裁判所に提起されたことはさきに述べたとおりである。

してみると、本訴は出訴期間を経過して提起された不適法な訴であるから却下を免れないものである。

よつて、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮本聖司 裁判官 藤原寛 裁判官 郡司宏)

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